【サプライチェーン】間違いだらけの物流戦略

supply chain concept diagram hand drawing on chalkboard

私は仕事の関係上、150社程の日系製造業や貿易会社の方とお話をする機会がありましたが、ヨーロッパ系企業と比較し、強く印象を受けていることがあります。

それは、日系企業(特に製造業、貿易業)のほとんどは物流を戦略的に考えていない、ということです。

もちろん、ヨーロッパ系企業は、大量購買の大量販売で、物流も大量のコンテナで、という流れがありますので、日系企業のビジネスモデルと同じように比較することはできません。しかし、日系企業(特に製造メーカー内)には、物流がビジネスの亜流で価値を生み出さないものというイメージが、その物流戦略の根底にあるようです。製造業や商社の物流部署の方が海外に駐在することは稀ですし、あくまでも作業をする部署、というイメージになっているようです。各部署から指示が入り、倉庫と確認してインボイスやパッキングリストを発行して物流会社に引き渡す、およそこういうイメージです。本社がこのような認識ですので、海外子会社も同様です。

実際、このような経験をしたことがあります。

ある日本を代表する機械メーカーは、航空輸送で外装箱(外箱)であるカートンにかすり傷の報告が入るたびに、ダメージクレームを行っています。

その理由を物流部署のマネージャーに尋ねたところ、驚愕の答えが返ってきました。

“物流会社からダメージと聞いたので、ダメージ品と把握するしかなく、もう売れない。。。” とのこと。

でも、物流会社は外箱の傷しかチェックができませんし、外装用のカートン(外箱)は輸送上のダメージから内装箱(化粧箱)や製品を守るためのものであり、外箱の入れ替えも可能です。その後、物流会社に対してクレーム、営業担当者に対しては改善報告書、必要書類の準備、保険会社への求償といった流れになります。金額や傷の程度にかかわらず、一事が万事この調子なわけです。そして、多くの人達を巻き込んで、丸一日かけて時系列にしてレポートをまとめます。航空輸送をよく利用される方はご存知でしょうが、改善報告書の数日後に、また同じようなダメージが起きて、上記の流れを繰り返します。

結局のところ、多くの製造業の中で、物流は自分自身が上司に責められないための業務、になってしまっているようです。

一方で、ヨーロッパ企業では、物流部門はサプライチェーンの一部を担う、れっきとした一つの部門であり、戦略的に商品企画から入ってきます。物流は重量と同じぐらい、もしくはそれ以上にサイズが重要です。内箱の種類を制限し、外箱を複数のみに抑え、パレットに積み付けやすく、多く段積みができるように梱包し、効率的に運ぶことができるようにしています。また、ダメージ一件一件を問題視するのではなく、件数や確率のように数値化し、KPIとして目標設定を行い管理します。

このような効率化こそが全体的な物流コスト削減に繋がっています。

日系企業では、上述したとおり、外箱へのかすり傷であったり、トラック輸送の燃油サーチャージのコストであったり、非常に細かな部分に気がつくのですが、木を見て森を見ず、という状況に陥っている会社が多いのが現状です。つまり、出荷の一回ずつの細かなコスト削減が得意ですが、出荷一回ずつに気を取られ、それに費やす時間、労力、人件費を顧みないため、生産性が異常に低い、という状態に陥っています。さらに、細部においてこだわりがあるため、各業務スタッフの経験に依存することが多く、業務を単純化することができず、新たなシステム導入さえ難しくなっています。

重要なことは、物流改革、物流費の一つの項目を下げれば達成できるものではなく、全体のサプライチェーンの中で検討されなければいけません。そのためには、納品方法や購買方法でさえ変えることも視野に、まずはサプライチェーン責任者が大きなビジョンを作ることが必要です。安いネジを本当に一個単位で売る必要はあるのでしょうか。親会社が在庫を減らして、海外子会社が在庫を増やして意味はあるでしょうか。財務上の問題を子会社に押し付けただけの話で、何も解決していないということになります。

これまで書いてきました通り、サプライチェーンの改革には、大きなビジョンを作り、それぞれの部署(物流部署、購買部署、販売部署等)の目標に細分化できる、サプライチェーンに精通する責任者が必要です。グローバルな視点で購買から納品まで全体を見渡せることのできる人材の育成が今後の企業の命運を握っていると言っても過言ではありません。既にヨーロッパやアメリカ系の競合他社はそれに気づいています。

 

 

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