Hanjin破綻に学ぶ、インコタームズ変更の勧め

Call center operator in business concept

2011年の東北地震による津波被害、2013年のMOL Comfortの沈没事故、2015年の中国天津での爆発事故による港湾被害で、多くの製品が損害を受けたことは記憶に新しく、また今年2016年の8月末、Hanjin(韓進)という世界でも大手の船会社が破綻しました。

Hanjinのケースでは、長い期間コンテナを引き取れず、急遽航空輸送で対応し、特別損失を出すことになった荷主も多かったと聞きます。これら一連の損害により、FOB、CFR、CIFで取引されていた企業の中には、契約やインコタームズの適用を見直しされた企業も多いのではないでしょうか。でも、実際には、まだまだコンテナ輸送やLCL輸送において、FOBやCIFが多く使われているのが現実です。

同じグループ会社同士の取引であればスムーズに終わっても、別会社同士の取引であれば、インコタームズの設定が大きなトラブルに発展する可能性があるのです。少し例を使って、説明してみます。

あなたの日本企業(東京港)からオランダ(フランスでもドイツでもアメリカでもどこでもいいです。)のサプライヤーから、FOBで購入契約をしていたとします。FOBですので、あなたの会社が船会社を選定しますよね。Hanjinに決定されたとしましょう。

オランダのサプライヤーは、Hanjinが入港するオランダの港(ロッテルダム港)のターミナルまでコンテナを輸送します。

ここまではいつもの流れですね。では、ここからが、ポイントです。

オランダのサプライヤーがHanjinのロッテルダム港のターミナルにコンテナを配達したタイミングで、Hanjinが突然破たんを発表したとして、コンテナの取り卸し中にコンテナ船の差し押さえを恐れたHanjinは、港に入港させることができません。船会社や物流会社から連絡を受けたShipper(オランダのサプライヤー)は、現在ロッテルダム港のターミナルにあるコンテナを引き取れることを確認します。FOB契約ですので、Consignee(あなたの会社)が別の船会社の利用を決定し、オランダのサプライヤーに通知します。オランダのサプライヤーは、船会社や物流会社に対し、新たにコンテナ輸送の予約を入れます。物流会社は、元々あったターミナルからコンテナを引き取り、コンテナの中身を新たな船会社のコンテナに詰め替えて、新たな船会社のターミナルに配達しました。さて、このコストは誰が持つのでしょうか。

Shipper(オランダのサプライヤー)曰く

“FOBで販売して、Consigneeが船会社を決定し、そのターミナルにコンテナを配達したのだから、船会社を変更したコストはConsigneeが持つべきだ”

正しいような感じがします。。。

でも、Consignee(あなたの会社)はこう言うでしょう。

“FOBは、Free on Board である。コンテナは船の上に乗っておらず、まだConsigneeのものになっていない。船社変更によるコストはShipperが払うべきだ”

これも正しいような気がします。。。

この両者の言い分は、どちらも正しく、どちらも間違えている、ということになります。正しいというのは、どちらも論理的であるということですね。ただ、インコタームズの大きな誤解を紹介すると、どちらの言い分も論点が間違えている、ということが分かります。

それは、インコタームズに所有権の移転についての規定はない、ということです。

インコタームズは、リスク負担や、(貿易手続き・輸送)費用の負担に関する規定が含まれますが、所有権の移転については書かれていないんです。

では所有権の移転、というのはどのように判断されるべきなんでしょう。一般的なことでお話しますと、例えばBill of Lading(B/L) というのは、皆さんご存知の通り、有価証券です。そのB/L自体が製品と同じ価値を有するため、コンテナを引き取るためには、そのオリジナルの書類が必要です。ということは、そのB/Lを持っている会社が、その製品の所有者となりますよね。B/Lで貿易をされている企業の多くは、支払いがされた時点で、B/Lを輸入者に発送する、というケースが多いのではないかと思います。ただ、今の時代、ヨーロッパと日本の貿易で、オリジナルB/Lを使って貿易をしている会社は皆無に等しいですね。ほとんどは、Express B/LやSea Way Bill と言われるもので、Air Way Bill と同じようなものですね。ここでは細かく説明しませんが、その書類自体に価値はなく、いわゆる送り状のようなものです。では、この書類を持っていても貨物の所有者、というわけにはいきませんね。この書類が発行された時点で、Consigneeもこの貨物に対して、アクセスする権利を持つことができます。では、その発行されるのは、いつでしょうか。もちろん、貨物が船に搭載されたら、ということになりますね。

長々と説明してきましたが、今回、お伝えしたいことをまとめます。

1, コンテナ輸送やLCL(船の混載便のことですね。)でのインコタームズは、FOB => FCA、CIF => CIP、 CFR => CPT を使うこと。

2, 所有権の移転は、(売買)契約書に盛り込むべき内容であり、インコタームズでは判断できないということがお互いが理解できていること。

 

 

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